品質保証部門 サラリーマンの日常と実態

大企業の品質保証部門で働く四大卒、サラリーマンの日常と実態

製造現場での、品質の不正(試験データ改ざん)の監査での見抜き方

神戸製鋼の試験データ改ざん、日産の不正検査など、企業の度重なる不祥事により、日本の製造業(Made in Japan)の根幹と信頼が揺らぎつつある社会問題と化しています。

 

よって、企業内でのコーポレートガバナンス、内部統制の体制は、これまで以上に問われることになります。その中の一部の業務として、製造現場を対象とした品質監査というものがあります。最近は、よくできていることを確認するだけでなく、本当に不正をしていないか、疑って厳しくチェックする体制が問われます。

 

では、不正を見抜くにはどのようにすればいいかというと、普通に、標準確認して記録を出してくれと監査中に質問すればいいのでしょうか?

 

いいえ、私たち(みなさんと私たち)は違いました。

 

過去の私の経験則上、

こちらから、ランダムサンプリングをしたり、一連の記録を、生データか紙ベースに手書きで記録されたものを大量に見る、これが基本なのです。

 

用意する側は、都合が悪いデータを極力、審査員の目につかないように、隠します。

そして、当たり障りのない、いい結果の記録表だけを、何枚か用意して、

 

エビデンスを見せろ」と審査官に言われた時に、

 

「へい、こういうのがあります」と被監査部門から記録を選んで見せてくるのです。巧妙なことに、さらに見せろと言われた場合に備え、あと数枚見せてくる場合もあります。

 

そのような場合は、こうしましょう。

まず記録表の一覧リストNoがある台帳を見せるように言います。そして例えば今年分が全部でNo100まであって、100枚の製造記録が残されているとしましょう。例えば製品の検査記録や試験記録の数値が残ったものです。

そしたら、すかさずにこう言います。

 

2017年の●●の製造記録表のNo.20~40までを今すぐに見せてください。と言います。

そうすれば、向こうもビクッとくるでしょう。

 

これは、TVドラマの半沢直樹でも、金融庁の抜き打ち特別検査の時でも、国税がよく使う手口でしたね。それを察知した半沢直樹は、金融庁が書類を保管された倉庫に到着するまでのわずかな間に、先回りをして見られたくない記録を、こっそり抜き取っていましたね。不正を見抜く監査とは、こういうことなんです。

 

しかし被監査部門もバカではありません。さらに巧妙な細工をしてくる場合があります。先ほどの今年分の製造記録表の台帳をねつ造して、あえて都合が悪いデータがある記録表を、リストに入れずに取捨選択をして、監査のためだけに二重帳簿にしている可能性があります。

 

その場合も見抜く方法があります。それは、ほかのデータとの突合せを行うのです。例えば、とある工場の品質管理課を対象に、そのような試験データの記録を監査するとしましょう。品質管理課は、今年分の記録の台帳を見せてくるでしょう。

 

そしたら、同時に別の監査官を、工場内の他の部署(技術や、製造課、保全課、もしくは本社機能)にも向かせるか、問い合わせをするなどして、台帳に乗っているリストが

本当に漏れがないか、クロスチェックをするのです。

特に記録をいくつかの部門に、写しCC)で発信した場合、ほかの部署にも記録が残るはずです。これを見逃さないのです。

 

これは、同じ日にタイミングを合わせて、同時に確認しないと意味がありません。次の日にしようとしたらすぐに、帳尻合わせに改ざんやねつ造されます。被監査部署は、深夜まで残業までしても、そのようにしてくる可能性があります。

 

もっといい方法があります。それは、生に近いデータを探しにいくことです。監査途中に突然、記録を大量に保管した書庫に行きましょうと言い、すかさず連れて行ってもらい、そこの段ボールの中から、記録を取り出して確認するのです。

そこには、データを細工する前の、手書きの本当の測定・検査・試験データが残っている場合があり、本当に規格値を満たしているのか確認できる可能性が高いです。

 

測定器や、PC端末には過去のログが残っている場合もあります。その場合は、その場で過去のログを取り出してもらいましょう。そこに書かれた試験データが、規格値を本当に満たしているか確認ができます。

 

更にもっといい方法があります。例えば製造課が、検査記録や試験データ、工程能力の結果を保有しているとし、これが本当に正しいか?を監査したいとします。

多少手間がかかりますが、もう現場に直接いき、直接製品や部材をサンプリングして、その場で測定してみましょう。

特に不良率が多いモデルの製品や、日常的なトラブル記録で、チョコ停などで苦戦しているモデルの製品を対象に選びます。

 

記録では、工程能力がCpk1.33あるのに、実際に現場で再度サンプリングをして、0.7くらいしかなかったら、これはデータを改ざんしている可能性が非常に高いです。

 

これは不正を見抜く監査手法の一部です。まだまだ考え付けば他にもいろいろ手段はありますが、これくらいとしておきます。

 

なぜこのように見方が思いつくかというと、私が何度も工場にて監査を受ける側を経験してきたからです。極力、説明に困るような悪いデータは見せないようにします。その時のやり方や心理を逆にとって、監査官の立場で考えればOKです。

まずは、審査を受ける側の経験も積むことも大事です。そうしないと実務レベルでの運用が理解できずに、監査官となっても、突っ込んだ質問ができません。チェックシートを単に読み上げるだけの監査官になってしまいます。

 

またTVドラマの視聴も有効です。

空飛ぶタイヤ(三菱ふそうのトラックの車輪のハブ強度不足のリコール隠し)や、

半沢直樹国税の立ち入り検査)を見ると、監査する側、巧妙に細工をしてごまかそうとする受ける側の様子が、わかりやすく再現されていますので、

見てみることをお勧めします。

 

それでは、監査業務に携わっている、品質管理・品質保証部門の方、共にがんばって参りましょう。